Letter#004 日本式の黒人キャラクターを作る

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2026/09/22 02:54

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本日、WhiteCrowのキャラクター紹介を公開しました。
今回は、その中のひとり、マリクについて少し長い話をしようと思います。
最初に書いておくと、マリクというキャラクターが生まれたきっかけには、私自身のかなり強い怒りがあります。

以前から、「日本の漫画やアニメには黒人のキャラクターが少ない」「もっと黒人を登場させるべきだ」という海外からの意見を目にすることがあります。
私は、この意見に納得していません。

アメリカと日本では、歴史も人口構成も違います。
アメリカには、奴隷制をはじめとする歴史的経緯があり、何世代にもわたってアメリカ社会を構成してきた大きな黒人コミュニティがあります。ですが日本には、同じ歴史はありません。

もちろん、現在の日本にも黒人の方は暮らしていますし、黒人と日本人の両方にルーツを持つ方もいます。
しかし、それと「日本の作品にもアメリカ作品と同じような人種構成を求めるべきだ」という話は別だと、私は考えています。
まして、日本の漫画に登場する褐色肌のキャラクターを見て、「これは黒人だ」と解釈されることにも違和感があります。
アジア人にも肌の濃い人はいくらでもいます。
肌の色が濃いことと、その人物が黒人であることは同じではありません。あまりにもアジア人への理解が欠けています。

そもそも、日本の漫画やアニメには独自のキャラクターデザインの文法があります。
日本を舞台に、日本人として描かれているキャラクターであれば、金髪でも青い目でも、特別な説明がない限り日本人として読むことがあります。
日本人であることを示すために、全員に「アジア人らしい顔」を描き加える必要はありません。

ところが海外のファンアートなどでは、日本人のキャラクターを「よりアジア人らしく」描くために、原作にはない細い目や吊り目に変更されているものを目にすることがあります。
私は、これが嫌いです。
そのキャラクターは、最初からアジア人です。
原作で大きな丸い目をしたかわいい日本人の女の子なら、大きな丸い目をしたかわいいアジア人です。
外から見た「アジア人らしい顔」を付け加えなければアジア人になれないわけではありません。

同じように、日本人のキャラクターを黒人として描き直し、それを「多様性」や「黒人へのエンパワメント」として語ることにも、私は賛成していません。
個人的な趣味として「このキャラクターが黒人だったら」と考えたというのであれば、それは自由だと思います。
また、作品そのものを「もしアメリカが舞台だったら」「もしアフリカで作られた作品だったら」と再構築するのであれば、当然、登場人物の人種構成も変わります。
でも、日本人として作られたキャラクターを「多様性のため」に黒人へ置き換えることを、私は多様性だとは思いません。

日本人はアジア人です。
アメリカ社会において、アジア系もまた少数派です。
黒人の表象を一人増やすために、すでに存在していたアジア人の表象を一人消す。
それを「多様になった」と呼ぶことには、私は疑問があります。
黒人のキャラクターが欲しいのであれば、新しい黒人のキャラクターを作ればいい。
私はそう考えています。

だから、作りました。
それがマリクです。
マリクを作るとき、私は最初から「黒人の少年」と決めていました。
ただし、キャラクターデザインをお願いするときには、黒人であることを示すための顔立ちの特徴を、あえて強く入れないようお願いしました。
これは、日本の漫画で外国人を描き分ける方法を知らなかったからではありません。
むしろ、その文法を知ったうえでの指定です。

日本の漫画では、日本人であることが基本に置かれる作品の場合、白人や黒人など日本人とは異なる人種の人物には、顔立ちにもそれと分かる特徴を加えることがあります。
私は、その文法を理解しています。
そのうえで、マリクではあえてやりませんでした。

なぜなら、私はずっと疑問だったからです。
黒人のキャラクターは、「黒人だと分かる顔」をしていなければ、黒人として成立しないのでしょうか。
私は、そうは思いません。

そしてもうひとつ、私が海外の二次創作を見ていて強く違和感を持っていたことがあります。
もともと「かわいい」「美しい」としてデザインされていたキャラクターを黒人として描き直す際に、その「かわいい」「美しい」という造形まで一緒に変更されてしまうことです。
原作には存在しない顔立ちや、場合によっては歯列矯正器具などまで加えられ、もともとのキャラクターが持っていたデザイン上の魅力とは別の方向へ変更されているものを見ることがあります。正直、大変不愉快です。

私が不愉快に感じるのは、人種を変更することだけが理由ではありません。
元のキャラクターデザインが、どのような意図で作られているのかを理解しないまま、別の文化の価値観でリデザインされることです。

キャラクターデザインには意味があります。
日本の漫画で「かわいい」「美しい」「チャーミング」として使われている造形もあれば、そのキャラクターの性格や立場を伝えるために選ばれている造形もあります。たとえば、そばかすがチャームポイントとして使われることもあります。

ところが、そうした表現がもともと何を意味していたのかを踏まえず、別の文化における「あか抜けない」「格好悪い」といった記号へ置き換えられているものを見ることがあります。

リデザインするのであれば、まず元のデザインを理解してほしい。
「なぜこのキャラクターは、この顔、この目、この髪型、この装飾なのか」。それを調べ、その意図を踏まえたうえで再解釈することと、知らないまま自分たちの文化の記号で上書きすることは、まったく違います。

他文化のキャラクターを扱うのであれば、その文化の表現について調べることも、リスペクトの一部ではないでしょうか。

人種を変えることと、そのキャラクターがもともと持っていた「かわいい」「美しい」というデザイン上の意図まで捨てることは、別の話です。

黒人の少年は、かわいくてはいけないのでしょうか。
黒人の少女は、美少女であってはいけないのでしょうか。

私は、そんなことはないと思います。

だからマリクは、かわいい男の子として作りました。
しかも、ただ肌の色を黒くして可愛くデザインしただけではなく、マリクには“黒人らしい”ドレッドヘアを取り入れています。
マリクの髪形を考えていた時、
「ドレッドヘアを、ロップイヤーの垂れ耳みたいにしたらかわいいんじゃない?」
と思いつきました。

ドレッドヘアだから、ワイルドである必要はありません。
黒人だから、強さを象徴する動物をモチーフにする必要もありません。
武闘派である必要も、日本刀を持たせる必要もありません。

ドレッドヘアを垂れ耳に見立てたらかわいかった。
だから、ロップイヤーです。

黒人のキャラクターだって、普通にかわいくていい。

それが、私がマリクを作るときに出した答えのひとつです。

そして、ここにはもうひとつ、私が以前から感じている不満があります。
他文化や他人種を描くのであれば、その文化をきちんと理解し、リスペクトするべきだ。
この考えそのものに、私は反対していません。
むしろ、そう思っています。
だからこそ言いたいのです。

それなら、日本の文化にも同じだけのリスペクトを向けてください。

海外作品に登場する日本人を見ていると、日本語を母語としている設定なのに日本語をまともに話せなかったり、日本と中国と韓国の文化が混ざっていたり、日本文化について十分な監修が入っているとは思えない描写を目にすることがあります。

俳優本人が日本人でなければならない、と言いたいわけではありません。
韓国系でも、中国系でも、その他のルーツを持つ人でも、日本人を演じることはできるでしょう。

でも、日本人を演じるのであれば、日本語を話す人物には日本語を話してほしい。
日本を描くのであれば、日本文化を調べてほしい。

日本、中国、韓国は、それぞれ違う国で、違う言語と文化と歴史を持っています。
それを区別することは、どこかの国や民族が優れていると言うことではありません。
違うものは、違います。

アメリカ社会の中で「POC」という概念が重要であることと、その大きなカテゴリーの中で、日本人、中国人、韓国人をはじめとする異なる文化をひとまとめにしてよいことも、別の話だと私は考えています。

もし私がアメリカを舞台にした作品を作っているのであれば、アメリカで暮らす人から「その描写は現地では不自然です」と指摘されれば、私は調べます。私より現地の文化を知っている人の意見には、当然耳を傾けるべきだからです。

だからこそ、逆の場合も同じであってほしいと思っています。

私は日本で暮らし、日本語を使い、日本を舞台にした作品を作っている日本人のクリエイターです。もちろん、日本人だから日本について何でも知っているという意味ではありません。それでも、日本について十分に調べないまま、別の国の社会的・文化的な基準を持ち込み、「こちらのほうが正しい」と日本の作品を修正しようとすることには納得できません。

他文化を尊重するというのであれば、まず、その文化について知ろうとしてください。

黒人を描くときには、その背景を理解しろ。
ステレオタイプで描くな。
文化を尊重しろ。

そう言うのであれば、私はその言葉をそのまま返したい。

日本を描くときにも、日本を理解してください。
日本の漫画を扱うときにも、日本の漫画文化を尊重してください。
リスペクトは、一方向だけに要求するものではないはずです。

私は、日本のプロのクリエイターです。
そして日本は、漫画という表現文化を長い時間をかけて発展させてきた国です。
だから、日本の漫画に対して外側から「この人種はこう描かなければならない」「この表現でなければ正しくない」と基準を提示されたとき、その基準に納得できなければ、私は反論します。
そしてクリエイターなのであれば、言葉だけで反論するより、自分が正しいと思うものを実際に作ればいい。
そう思いました。

だから私は、日本人のキャラクターを黒人に変更しませんでした。
黒人のキャラクターを、一から作りました。

黒人として生まれた少年で。
日本のアイドル作品のキャラクターとして作られていて。
かわいい顔をしていて。
ドレッドヘアをロップイヤーの垂れ耳に見立てた、ウサギモチーフの男の子。

それがマリクです。

誰かが決めた「正しい黒人キャラクター」を作ったつもりはありません。
日本の漫画の文法を知っている日本人のクリエイターとして、私が正しいと思う黒人キャラクターを作りました。
マリクは、その答えです。

 

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